TOP > 蝦夷和紙工房 紙びより

01

平成31年度デザイン活用型製品開発支援事業

蝦夷和紙工房紙びより

蝦夷和紙商品のラインナップ整備

代表 和紙職人・和紙作家 東野 早奈絵さん

和紙の可能性を信じ、新たなビジネスに挑戦

2012(平成24)年にオープンした「蝦夷和紙工房 紙びより」は、代表で職人の東野早奈絵さんが手漉きで和紙を製造する、道内では希少な和紙工房の一つ。ハガキや名刺、大判紙のほか、手漉きの和紙を加工した立体作品や雑貨など多彩なアイテムも制作しています。中でも話題の商品は、東野さんが自ら採取した白樺やハルニレなど北海道の植物を原料に作る「蝦夷和紙」です。原料もデザインも“北海道ならでは”というオリジナル性が話題を呼び、様々なメディアで取り上げられてきました。注目を集める一方で、制作から接客まで一人で行うため、営業面で伸び悩んでいたそうです。「単価の低いハガキ販売がメインのBtoCから、大判の和紙などの制作技術を生かしたBtoB型商品にビジネス転換したいと考えていました。でも、企業へ向けた商品の制作や営業に時間が割けず、自分の力だけでは上手くビジネスを軌道に乗せられないでいました」。また、企画やデザインの質を高め、ブランディングにも力を注げる方法はないかと悩んでいた時、ものづくりの仲間から勧められたのがこの支援プロジェクトです。専門家の先生のアドバイスを受けて、本格的にBtoBを意識したビジネスを展開することになりました。

代表 和紙職人・和紙作家 東野 早奈絵さん

代表 和紙職人・和紙作家 東野 早奈絵さん

BtoB活動に向け運営方法を抜本的に改革

まず取り組んだのは、商品開発と営業活動に充てる時間の確保です。制作に取り組む日と、接客が必要なショップの営業日を分けることで、効率的に仕事を進められるようにしました。さらに、北海道で希少な和紙工房というブランディングを強化するため、商品単価を作業量に見合った適正な価格へ引き上げ、店名を「北の紙工房」からキャッチ―な響きのある「蝦夷和紙工房」へ変更してはどうか、という提案も受けた東野さん。思わぬ大胆な提案に、最初は戸惑いと葛藤があったと言います。「営業日を限定し、価格を上げることでお客様が離れてしまうのではと不安でしたが、一人だからこそスムーズに仕事できるようコントロールすべきだと、専門家の方が何度も説得してくださいました」と、決断した理由を教えてくれました。以来、「制作に打ち込む時間を設けたからこそ、一層お客様に喜ばれるもの作りができる」と意識を変え、商品づくりに邁進しています。蝦夷和紙を工房名にしたことも、気持ちの上で大きな一歩になりました。職人としてはまだ若い自分が付けた名が、土地の名を冠した伝統ある産地に並ぶようで気後れしましたが、結果的には「蝦夷和紙を北海道の代表的な文化に」という職人としての覚悟を新たにすることができました。イメージ戦略も含めて工房の価値を客観的に見出してもらえたおかげで、勇気を出すことができたと言います。

道産植物を使用した蝦夷和紙

道産植物を使用した
蝦夷和紙

営業ツールを作成し提案の場を広げる

プロジェクトでは、工房のブランディングだけでなく、名刺やカレンダーといった企業向けの提案商品や、大判の蝦夷和紙のラインナップを紹介する営業用のリーフレットも作成しました。また、スケジュールの関係で支援が実現しなかったものの、インテリア用のアートパネルや、消臭などの機能を持たせた和紙制作のアイデアは、今後の参考になったそうです。「支援の成果が出せるまでにはまだ時間がかかると思いますが、先生の力をお借りして企業へ働きかけるためのベースを整備できたことで、間違いなく今後の活動に弾みがつきます。また、仕事の取り組み方などを客観的に指摘していただき、私自身もっと業務内容を俯瞰して見る目を養うことが必要だと感じました」。これからは、今まで胸に秘めていた市町村の特産品とのコラボレーション企画や、建築業界への提案も進められると思いを膨らませます。素朴で温かみのある和紙が、人々の暮らしに当たり前にあるものになれるよう、精一杯活動していきたいと展望を語りました。

支援チーム製品開発アドバイザー:柏崎直人、福井亜美

本事業では「蝦夷和紙」のロゴも新たに制作し、
洗練されたリーフレットが完成しました。

蝦夷和紙工房 紙びより

福井県の越前和紙産地で修業した東野早奈絵さんが営む、手漉き和紙の工房兼ショップ。ハガキやアクセサリー、インテリア雑貨の制作のほか、ワークショップを開催。「蝦夷和紙プロジェクト」を企画・運営し、北海道の植物で作る紙づくりを精力的に進めています。

住所 札幌市厚別区厚別北3条5丁目33-5
電話 011-891-8424
営業時間 10:00~17:00、水曜定休(臨時休業あり) ※ショップ営業は木~日曜・祝日のみ
E-mail kamibiyorisana@yahoo.co.jp
URL https://ameblo.jp/kamibiyori/