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令和3年度プロダクトデザイナー派遣事業

竹栄株式会社

yuk(ユック)「動ける寝袋」

代表取締役社長 竹田 尚弘さん、Manhattan store「Mujin」責任者 田畑 翔也さん

北海道発ブランドの新たな挑戦

札幌を拠点にアパレル商品の製造卸売業を営み、2022年春に創業95年目を迎える竹栄株式会社。インターネットショップでの小売にも力を入れ、2013年からはオリジナルスポーツブランド「yuk(ユック)」を展開しています。特にキッズのスキーウェアは、北海道発ブランドならではの機能性の高さや工夫が評判を呼び、多くのリピーターを持つ人気商品。直販の主力商品となっています。

「卸売の厳しい価格競争から脱却するには、オリジナルブランドの品揃えと直販の強化が必要です。現状のラインナップは秋冬商品にかたよっているため、培ってきたノウハウを活かして新たな商品づくりに挑戦し、販路を拡大したいと考えていました」と、竹田尚弘社長。専門家から春夏シーズンに向けた新商品開発のアドバイスをいただき、yukをさらに成長させるためのブランディングも勉強したいと、事業に応募しました。

左:代表取締役社長 竹田 尚弘さん、右:Manhattan store「Mujin」責任者 田畑 翔也さん

左:代表取締役社長 竹田 尚弘さん
右:Manhattan store「Mujin」責任者 田畑 翔也さん

今ある強みを活かす商品開発を

社内のプロジェクトメンバーが、最初に山村先生から提案されたのは、「自分たちを知る」ためのブレストを行うことでした。ブランドの強みや会社が大事にしていることを改めて洗い出し、整理したことで、新商品に「yukの強みである“北海道ならでは”の機能を活かす」という、大事なポイントが絞れたそうです。

その一番の特徴は、子どものスキーウェアのトイレ問題を解消した「おトイレ楽ちん機能」。つなぎを脱がずに、お尻のジップを開けただけでトイレで用が足せる同社オリジナルの機能です。これに加え、耐水圧5,000mm、蓄熱裏地、超撥水加工という、暖かさを保つ機能も活かせる新商品を、多くの社員を交えて検討していきました。メンバーの一人、田畑翔也さんが所属していたのは仕入れ品を扱う部署。これまで自社ブランドの商品をあまり意識していなかったそうですが、「会社やyukが持つ様々な強みに気づき、ほかの社員とも商品の具体的な話をするようになりました」と言います。

様々なシーンにおける多彩なアイデアが出され、最終的に新商品は、外遊びができ、そのまま寝られる、ウェア型の「動ける寝袋」に決定。スキーウェアとのシナジーが期待できると考えたからです。「おトイレ楽ちん機能」をメインにしつつも、寝袋としての機能をどう満たすか、デザインや着用イメージも含めて細かく詰めていきました。竹田社長は、「専門家の方々から『ジップで開いたお尻部分に持ち手をつけてはどうか』『カイロや貴重品が入る小さなポケットがあると、機能性が増すのでは』など、様々な助言をいただき、反映していきました」と振り返ります。

ブレストを行うことで
商品開発の糸口を
つかむことができた。

遊べて寝られる、唯一無二の「寝袋」

「快適に寝られる」という形を実現するのに苦戦しましたが、縫製工場と細かな調整を繰り返して試作は最終段階に。起きてすぐ活動できるよう、手首と足首から先はジップで簡単に取り外しできるという、ユニークな工夫も目を引きます。防寒仕様なので、朝晩冷え込む北海道ではアウトドアで通年活用でき、冬キャンプの際に寝袋とスキーウェアの両方を持つ必要もありません。ラインナップは、子ども用と大人用で各2サイズ。寝袋という新たなカテゴリー商品が生まれたことで、アウトドアショップなどにも販路が開けると期待を寄せています。

完成後は、昨年11月にオープンした会員制の完全無人店舗でお披露目会を開き、クラウドファンディングでの予約販売も予定しています。田畑さんは現在、この店舗の責任者。「一からものをつくり、アパレル業界以外の方からの意見をいただけたことは貴重な学びになりました。当社ブランド商品を直接手に取っていただけるこの店舗で経験を活かし、しっかりとマーケティング調査や情報発信をしていきたい」と意欲的です。

快適に使うことを考えた、
ユニークなアイデアが
散りばめられた寝袋が完成

事業の経験が社内の士気を高める財産に

意識が変わったのは、プロジェクトメンバーだけではありません。これまで商品開発は、各部署の仕入れ担当者が個別に手がけてきましたが、みんなでアイデアを出し合い、全社で共有して取り組もうと、社内の雰囲気が変わり始めています。

社長自身も、専門家の様々な意見に視野が広がったと話します。特徴を商品タグなどで分かりやすく伝える工夫から、多くの世代に好まれる商品のカラーリング、独自のデザインを意匠登録する必要性など、目からウロコのアドバイスばかり。「私たちはどうしても“売るため”の視点になりがちなのですが、山村先生や高橋先生は『いかに商品の良さをお客様に知ってもらうかが大切』だと教えてくれました」。今回の事業に力を得て、今まで温めてきた「原料も縫製工場もオール北海道のものづくり」にも乗り出しました。サイズ調整が可能で長く着られるyukのスキーウェアのように、目標は、無駄なく大切に着られる衣料を作り、世界に届けること。一品一品丁寧につくるオール北海道のウェアが、形になる日も近いかもしれません。

竹栄株式会社

1928(昭和3)年創業。アパレル商品の総合卸売業のほか、キッズ衣料が中心のオリジナルブランド「yuk」を柱に、インターネットショップ10店舗で直販も行っています。2021年11月には、社屋1階に北海道初の会員制無人店舗「Manhattan store Mujin(マンハッタンストア ムジン)」をオープン。廃棄量を減らすための「おさがりサービス」など、サステナブルな取り組みも精力的に行っています。

住所 札幌市中央区北3条西12丁目2番3号
電話 011-281-3121
営業時間 9:00〜18:00
E-mail takeei.01@ceres.ocn.co.jp
URL http://www.yuk-sports.jp/
   https://www.mstore-mujin.jp/