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平成30年度プロダクトデザイナー派遣事業

チエモク株式会社

森と暮らすうつわ「coberu(コベル)」

代表取締役 三島 千枝さん

普段の暮らしに、ぬくもりある木の器を提案

木の魅力や手仕事の素晴らしさを伝えたいと、北海道産木材を100%使用した木製小物を専門に製造・販売しているチエモク。製品の中心となっているのは、木の温かみを生かしたシンプルな器です。これまでは社長の三島千枝さんが自らデザインしてきました。

「以前別のプロジェクトで、高橋先生のご指導のもと下川町のハンノキを使って赤ちゃん向けの器を開発したんです。それが、プロダクトデザイナーやフォトグラファーといった専門家と連携し、製品を包装まで含めトータルでデザインした初めてのシリーズになりました」。この経験を経て、再び専門家の力を借りて新たなシリーズを開発したいと事業に応募。目指したのは、日々の暮らしに取り入れたくなるような、普段使いの器のラインナップ強化とブランディングです。

高橋先生から最初に提案されたのはエッジを効かせたシャープなデザイン。三島さんの頭にあったのは丸みを帯びた形だったため、ブレストと試作を丁寧に重ねてイメージを擦り合わせていきました。「リデザインしてくださった形は、こちらのイメージと高橋さんのアイデアが融合したとても素敵なデザインで、一目で気に入りました。そのご提案が、ほぼそのまま今の製品になっています」。

とはいえ、すんなりと完成したわけではありません。特に時間を割いたのは、材料の歩留まりを上げるための試行錯誤。高さのあるボウルを作るにはかなりの厚さの材料が必要なため、1本の丸太から取れる量が限られます。薄い素材を2層に貼り合わせて作れないか挑戦しましたが、課題が多く全てボツに。最終的に一枚板から削り出すことになりました。

代表取締役 三島 千枝さん

代表取締役 三島 千枝さん

新シリーズ発売がお客様と販路を広げる力に

そうして完成した「coberu」シリーズは、ぽってりとした丸みがありながら、無駄のない洗練されたフォルムが印象的。ハンノキの特長を活かした器は肉厚なのに驚くほど軽く、心地いい手触りも魅力です。木製品は、性質上どうしても変形や割れなどが起こりやすいのですが、汚れに強くて塗膜が長持ちする液体ガラス塗料で仕上げているので、手入れの必要がなく、安心して長く使えます。事業を通してお皿とボウル、カップができ、2021年8月にはカトラリーもラインナップに加わりました。

「もともと製作する予定でしたが、カトラリーは曲線が多く、フォークの先のような細かい部分も全て手作業で作ると大変な労力がかかるんです」と三島さん。加工を外注すると割高になるため見合わせていましたが、別の助成金を活用して新たな工作機械を導入したことで、自社工房での製作が実現しました。

coberu発売後は新たな顧客層が獲得できただけでなく、直売店やホームページを見て気に入ってくれたギフトやインテリアのショップ、レストランから注文が入るなど、課題だった販路の拡大にもつながりました。「これまでの販路はお土産や雑貨の小売店が多く、ライフスタイル系のショップを新たに開拓する必要性を感じていました。お客様や取引先が自然と増えていったのは、coberuの完成度が高かったからこそ」と、手応えを実感しています。

今年ラインナップが揃った「coberu」シリーズ。
丸みのある形、手触りに
こだわっています。

事業に背中を押され画期的なグラスが誕生

支援事業が終了してからも精力的に製品開発を続け、2020年3月にはグラスに木の脚を組み合わせた画期的な新シリーズ「嘉の輪(かのわ)」も発売しました。製品の原案は、coberu製作の終盤に山村先生が提案してくれたものです。「私には木を使ってグラスを作るという発想は全くなくて、最初はピンときませんでした。ところが実際形にすると、想像以上に良い評価をたくさんいただいて。この製品については自分の感覚は当てにならないと思い、先生方の声を素直に取り入れました」。ただcoberuと大きく違うのは、ガラスと木という異素材の組み合わせだということ。十分な強度に接着することに苦労し、納得のいく製品ができるまで約3年を要したと言います。

「木は水を吸って膨らんだり乾燥して縮んだりしますが、グラスは違います。そのため試作段階では、剥がれたり割れることもあって…。接着、塗装、グラス側の加工など、どこに問題があるか一つ一つ検証するのは大変な作業でした」。山村先生の紹介で異素材同士を接着する技術を持つ企業に相談に乗ってもらいながら、デザインは高橋先生のサポートを受け、試作する日々。そうして脚の部分は木のぬくもりがありながら、飲み物は冷たいままという、デザインも機能性も優れたかつてないグラスになりました。ワイングラスやビアグラスなど4アイテムがあり、贈り物として求める方が多いそう。今後はロックグラスも出したいと意欲的です。

さっぽろ産業振興財団の小規模企業向け製品開発・
販路拡大支援補助金(H31年度)で開発した
「天然木のよろこびグラス 嘉の輪(かのわ)」

専門家と共に作り上げた価値を大切に育てたい

「coberuも嘉の輪も、専門家の力をお借りして完成した宝。今はその価値を大切にしながら、多くの人に届けるのが目標です」。

事業を通して最も力になったのは、多くの会社やプロダクトを見てきた先生方がチエモクの製品を見て客観的に評価し、会社の得意を生かす形で次の製品を一緒に考えてくれたこと。「そもそもデザイナーさんは“当たり前のもの”は作らせてくれません。その分、難しいことに挑戦しなければなりませんが、自社だけでやるより格段にレベルの高い試行錯誤ができていると思います」と三島さん。事業の活用で開発費用を軽減できた分、その後は製品の品質を保ちながらしっかり供給できるよう、自分たちが努力していかなければ-。ものづくりに対する責任と思いを新たにしていました。

赤ちゃんギフトに人気の
「もりのともだち」シリーズ

支援チームオブザーバー:(株)コボ 代表取締役 山村真一
プロデューサー:高橋尚基(プロダクトデザイン)
アドバイザー:柏崎直人(ロゴデザイン、コピーライティング)
チエモク 株式会社

北海道産木材100%のものづくりにこだわり、器や雑貨など、木製小物に特化した自社企画の製品を製造。森の中に建つ工房併設の直売店やオンラインショップのほか、インテリアショップ、雑貨店などの小売店でも販売しています。「黒板消しストラップ」は全国的に知られる代表作。下川町で植樹も行い、次世代のために森を育てる活動も行っています。

住所 札幌市西区小別沢140番地
電話 011-790-7012
営業時間 10:00~17:00 ※ショップ営業は金曜~日曜10:30~16:00のみ
E-mail info@chiemoku.co.jp
URL https://chiemoku.co.jp/